第97回 座礁船はなぜパナマ船籍なのか?(2011/8/3)長尾幸子

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  ▼ なぜパナマ船籍が座礁する?▼
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海洋事故などで時折耳にする「パナマ船籍の○○号が・・・」のパナマ船籍。
座礁する船に、特別にパナマ船籍が多いわけではなく、
全体としてパナマ船籍の船が圧倒的に多いためなのです。

なぜ大型船舶はパナマ船籍が多いのでしょうか?

答えは パナマが課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される
「租税回避地=タックスヘイブン」だからです。

(タックスヘイブンについて詳しくはこちら→  タックスヘイブン )

例を挙げると、船主は日本の会社で、形式的な船主(船籍)をパナマにして、
実際の船主はパナマ船籍の船を借りて運用するという形式をとります。

パナマでは船舶登録等が簡単で、初期登録時に船舶の大きさによって
決まっている登録料はかかりますが、法人税は課税されず
収支報告義務もありません。

それが日本船籍にすると、船の乗組員の多くに自国民を雇わなければなりません。
約40%の法人税も課税されます。

パナマ船籍にすると、乗組員の10%がパナマ人であれば良いので、

経費を抑える事ができます。(日本の船の約4割がパナマ船籍と言われているそうです。)

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  ▼ パナマってどんな国?どんな利点が?▼
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パナマ共和国(通称パナマ)は、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸の
境に位置する共和制国家です。

(詳しくは パナマ大使館ホームページ をご覧ください)

南北アメリカと太平洋、大西洋の結節点に当たり、貿易や人の移動において
大きな役割を果たすパナマ運河が通っている場所となっています。
パナマは船籍の外国商船収入が多い便宜置籍国なのです。
他にもオマーン、リベリアなどといった便宜置籍国もあります。

では便宜置籍国には、どんな利点があるのかと考えて調べていたら、
ちょうどYahoo知恵袋にQ&Aがありました。
(Yahoo知恵袋はこちら→Yahoo知恵袋 )

簡単にまとめると、パナマのような国は自国に目立った産業がないため、
便宜置籍国となることで、「金融による収益(便宜置籍船を担保にした融資を行う)」
「金融業による雇用創出」「乗組員の雇用の創出」などの利点があるという
ことのようでした。

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  ▼ タックスヘイブン認定除外?▼
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このコラムは7/28現在で作成しましたが、
ジェトロによると、パナマがOECDのタックスヘイブン認定から
除外されたとの報道がありました。

【「2011年07月20日 メキシコ発
コスタリカとパナマがOECDのタックスヘイブン認定から除外された。

最低12の国・地域と二重課税防止条約、
租税情報交換協定を締結するという、
OECDの基準を満たしたためだ。通商弘報 4e252c8254790」】

今後、パナマ船籍は減っていくことになるのかもしれませんね。