≪ある不動産会社の提案営業≫ (2009.7.29)

第7回は、税務監査事業部 太田 吉子による
『ある不動産会社の提案営業』です。

2009年、上場企業の倒産件数は18件、うち不動産業が9件(2009年6月5日現在)という 不動産業界が苦戦している中、元気な会社があります。  

その不動産会社は東京近郊の町で、親の代から続き、現社長(50代)は2代目になります。
親が不動産業を始めた昭和の時代は不動産の値段がうなぎのぼりに上がり、建売も売買の仲介もおもしろいように出来ました。  

しかし、平成になりバブルがはじけると、売買物件の動きがなくなりました。  
地元で事務所を開き信用を得ていたこともあり、以前からアパート、駐車場の管理を任されていましたが、このままでは管理しているアパートは老朽化し、取り壊されたり、相続で売られたりして、 管理物件が減り、自分の会社がつぶれてしまう。
地主も土地を切り売りし財産が少なくなってしまう。  
ではどうしたら良いかと考えた結果が提案営業だったのです。

ケース 1   
住宅地の中で農業を続けている家があり、固定資産税を払うために土地を売らなければならない状況だった。
<提案>  
土地を売却せずに有効活用できる方法はないかと考えました。
そこで農地を賃貸物件に転用することにしました。
借入をし、アパートを建て、空いた土地は駐車場としました。
その結果、賃貸収入で悠々生活できるようになったのです。

ケース 2  
不動産所得の税金が高いという地主の相談を受けた。
<提案>  
確定申告書をお借りして、当事務所に相談をいただきました。
現在の賃貸状況が、税務上事業的規模に該当することがわかり、奥様に専従者給与を出すことで、かなり節税になるということが わかりました。
その結果を地主さんに報告し、税金が下がって大変喜ばれたのです。
不動産会社と会計事務所が一体となってお客様から喜ばれたケースです。

ケース 3  
将来的に相続税の負担が多くなることが予想された。
<提案>  
子供たちに財産の承継をしていくために会社を設立し、会社が個人資産を買い取り、子供を役員にしていくなどのシミュレーションを行いました。
これも税理士や他の専門家と相談しながら提案したケースとなります。

「社長の言葉」  
賃貸物件を建てるにあたっては、近隣の状況により、 工場、倉庫、あるいはコンビニエンスストアが借りたいという需要があれば、それに合わせた建物の建築をお勧めしています。  
10年間で貸室約300室、貸駐車場約1000台、貸工場、貸倉庫、コンビニ、保育園を 建ててもらいました。全て満室です。
古くなった貸家、アパートのリフォームなどについても、多くの物件を扱った経験からこの場所にはこういう間取り、色がいい等 提案できるのがわが社の強みです。  
これからの不動産業は、提案営業ができなければ生き残っていくことができません。  
ただし、その提案をお客様が受け入れてくれるかどうかは、お互いの信頼関係があるかどうかに かかってきます。
ですから、常日頃からお客様とコミュニケーションを取るようにしています。


不動産業界に限らず、どの業種においても、「お客様のために」というもう一つ踏み込んだアドバイスや 提案が必要だと思います。
不景気を乗り越えるためのヒントを社長さんから教えていただきました。
(担当:税務監査事業部 太田 吉子)

(次号予告:税務監査事業部  石井 直路による 『美容業界の今後について』)